Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
RESIN COMPOSITION FOR SLIDE MEMBER AND ROLLER BEARING
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/143210
Kind Code:
A1
Abstract:
Even in the use in an environment causing contact with a lubricating oil containing a sulfurous additive or in an atmosphere containing a sulfurous compound, there can be suppressed leaching of coating components or detachment of coating provided on a surface of retainer. There is disclosed a resin composition for slide member for use in mechanical parts whose at least surface area consists of a slide member, comprising a polyamidoimide resin of 60 to 120% elongation and, contained therein, fullerene and at least one disulfide selected from among molybdenum disulfide and tungsten disulfide, wherein based on the whole volume of the composition, the fullerene content is in the range of 0.1 to 10 vol.% and the disulfide content in the range of 0.5 to 20 vol.%.

More Like This:
Inventors:
EGAMI MASAKI
SATO YOJI
OKUDA TAEMI
Application Number:
PCT/JP2008/059123
Publication Date:
November 27, 2008
Filing Date:
May 19, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
NTN TOYO BEARING CO LTD (JP)
EGAMI MASAKI
SATO YOJI
OKUDA TAEMI
International Classes:
C08J5/16; C08L101/00; C08K3/04; C08K3/30; F16C9/04; F16C19/26; F16C19/44; F16C33/66
Foreign References:
JP2005299852A2005-10-27
JP2006160799A2006-06-22
JP2005089514A2005-04-07
JP2003306604A2003-10-31
JPH0797517A1995-04-11
Other References:
See also references of EP 2157135A4
None
Attorney, Agent or Firm:
WAKI, Misao (Toin-choInabe-gun, Mie 33, JP)
Download PDF:
Claims:
 少なくとも表面部位が摺動部材で形成された機械部品に用いられる摺動部材用樹脂組成物であって、
 該組成物は、合成樹脂にフラーレンと、二硫化モリブデンおよび二硫化タングステンから選ばれた少なくとも1つの二硫化物とが含まれており、前記組成物全体に対して、前記フラーレンが 0.1~10 容量%、前記二硫化物が 0.5~20 容量%含まれていることを特徴とする摺動部材用組成物。
 前記表面部位に形成された摺動部材が合成樹脂被膜であることを特徴とする請求項1記載の摺動部材用組成物。
 前記合成樹脂がポリイミド系樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の摺動部材用組成物。
 前記ポリイミド系樹脂がポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項3記載の摺動部材用組成物。
 前記ポリアミドイミド樹脂は、伸び率 60%~120%のポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項4記載の摺動部材用組成物。
 複数の転動体と、この転動体を保持する保持器とを備え、硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する環境、または硫黄系化合物を含む雰囲気で使用される転がり軸受であって、
 前記保持器は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の摺動部材用組成物の被膜を該保持器の表面部位に形成したことを特徴とする転がり軸受。
 複数の転動体と、この転動体を保持する保持器とを備え、硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する環境、または硫黄系化合物を含む雰囲気で使用される転がり軸受であって、
 前記保持器は、伸び率が 60 %~120 %であるポリアミドイミド樹脂被膜を前記潤滑油が接触する該保持器の表面部位に形成したことを特徴とする転がり軸受。
 複数の転動体と、この転動体を保持する保持器とを備え、硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する環境、または硫黄系化合物を含む雰囲気で使用される転がり軸受であって、
 前記保持器は、複数層からなる樹脂被膜を前記潤滑油が接触する該保持器の表面部位に形成し、保持器の摺動表面を直接被覆する第1層は、ポリイミド系樹脂の樹脂組成物被膜であり、最外層が無充填の合成樹脂または固体潤滑剤が配合された合成樹脂被膜で形成されることを特徴とする転がり軸受。
 前記ポリイミド系樹脂がポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項8記載の摺動部材用組成物。
 前記ポリアミドイミド樹脂は、伸び率 60%~120%のポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項9記載の摺動部材用組成物。
 
 前記第1層を形成する樹脂組成物に配合される充填材が、フラーレン、炭化ケイ素および酸化ケイ素から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1項記載の転がり軸受。
 前記最外層を形成する樹脂組成物に配合される固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、二硫化タングステンおよびポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項8ないし請求項11のいずれか1項記載の転がり軸受。
 前記保持器が鉄系金属材料の成形体であることを特徴とする請求項6ないし請求項12のいずれか1項記載の転がり軸受。
 前記転動体がころ形状を有することを特徴とする請求項6ないし請求項13のいずれか1項記載の転がり軸受。
 前記ころ形状が針状ころ形状であることを特徴とする請求項14記載の転がり軸受。
 前記転がり軸受が、回転運動を出力するクランク軸を支持し、直線往復運動を回転運動に変換するコンロッドの大端部に設けられた係合穴に取り付けられることを特徴とする請求項6ないし請求項15のいずれか1項記載の転がり軸受。
Description:
摺動部材用樹脂組成物および転 り軸受

 本発明は、表面部位が摺動部材で形成さ た機械部品に用いられる摺動部材用樹脂組 物、および、硫黄系添加剤を含有する潤滑 に接触する環境または硫黄系化合物を含む 囲気で使用される転がり軸受に関する。

 2サイクルエンジンは、混合気の燃焼により 直線往復運動を行なうピストンと、回転運動 を出力するクランク軸と、ピストンとクラン ク軸とを連結し、直線往復運動を回転運動に 変換するコンロッドとを有する。
 コンロッドは、直線状棒体の下方に大端部 、上方に小端部を設けたものからなる。ク ンク軸は、コンロッドの大端部に、ピスト とコンロッドを連結するピストンピンは、 ンロッドの小端部に、それぞれ係合穴に取 付けられたころ軸受を介して回転自在に支 されている。回転軸を支持するころ軸受は 複数のころと、複数のころを保持する保持 とからなる。

 上記したコンロッドの小端部および大端 に設けられた係合穴に取り付けられ、ピス ンピンおよびクランク軸を支持するころ軸 は、軸受投影面積が小さいにもかかわらず 高荷重の負荷を受けることができ、かつ、 剛性である針状ころ軸受が使用される。こ で、針状ころ軸受は、複数の針状ころと、 数の針状ころを保持する保持器とを含む。 持器には、針状ころを保持するためのポケ トが設けられ、各ポケットの間に位置する 部で、各針状ころの間隔を保持する。コン ッドの小端部および大端部における針状こ 軸受は、針状ころの自転運動および公転運 により針状ころ軸受にかかる荷重を軽減す ために、積極的に小端部および大端部に設 られた係合穴の内径面に保持器の外径面を 触させる外径案内で使用される。

 一方、一般の転がり軸受は、内輪と外輪 シール材等とで軸受内部が密閉され、その 受内部に転動体と保持器とが設けられ、グ ースが充填され、そのグリースで転動体と 持器が常に潤滑される。それに対して、上 針状ころ軸受は、内輪と外輪とシール材等 を有しないので軸受内部が密閉されず、グ ースをその軸受内部に充填することができ い。そのため、上記針状ころ軸受の回転の には、ポンプ等で潤滑油を摺動部に常に供 する必要がある。

 上記ポンプ等は、上記針状ころ軸受の回転 同時に稼動を開始するので、回転開始直後 針状ころ軸受の全体に潤滑油がまだ行きわ っておらず、十分な潤滑がなされない。そ ため、保持器と針状ころとの間に大きな摩 が生じ、保持器や針状ころの表面が摩耗し り、保持器外径面と実機ハウジング内径面 が摩耗し、最悪の場合、両者が焼き付いた するおそれがある。
 そのため、上記針状ころ軸受の回転開始直 の摩耗や焼き付きを防止すべく、保持器の 面に潤滑性を有する被膜を予め形成する技 が提案されている。

 例えば、浸炭処理で表面に硬化層を形成し 鋼材からなる保持器の転動体の案内面に、 質なダイヤモンドライクカーボン(以下、DLC という。)の被膜をスパッタ法等で形成し、 らに、銀等の軟質金属被膜を形成する方法 知られている(特許文献1参照)。
 この軟質金属被膜が保持器と針状ころの間 摩擦、および保持器外径面とハウジング内 面との摩擦を低減するので、潤滑が不十分 回転開始直後でも保持器や針状ころの焼き きが防止でき、しかも、この軟質金属被膜 使用に伴い摩耗しても、その下地のDLC被膜 新たに露出し、そのDLC被膜が摩耗を阻止す とされている。

 また、保持器の表面に上記軟質金属被膜 めっき法で直接形成する技術も提案されて る。例えば、低炭素鋼の表面に約 25~50μm  銀めっき被膜を形成する方法が知られてい (特許文献2参照)。この銀めっき被膜が保持 と針状ころとの間、保持器外径面とハウジ グとの間の摩擦を、それぞれ低減するので 上記と同様に、潤滑が不十分な回転開始直 でも焼き付きを防止できるとされている。 らに、銅めっき被膜も銀めっき被膜と同様 、保持器と針状ころとの間の摩擦を低減す 作用を有するので、焼き付きを防止できる されている。

 しかしながら、特許文献1に示す方法では 、軟質金属が摩耗して消失したあと硬質被膜 が露出し、ハウジング内径部は硬質被膜と摺 動することになる。この場合、保持器は摩耗 しないが保持器表面の硬質被膜によりハウジ ング内径部が摩耗するおそれがある。また、 製造の観点では保持器に浸炭処理を行ない、 スパッタ装置でDLC被膜を形成し、軟質金属被 膜を形成するので、作業工程が複雑で多くの 工数を要する。しかも、スパッタ装置は高価 で生産効率も良くないので、その装置を用い た処理はコストが嵩むという問題がある。

 また、特許文献2に示す方法では、硫黄系 添加剤を含有する潤滑系において、保持器表 面に形成された銀めっき被膜が、潤滑油に含 まれる硫黄成分と結合して硫化銀となり、こ の硫化銀が銀めっき被膜の表面を被覆する。 この硫化銀は銀と比べて脆く、被膜が剥離し たり、耐油性に劣ったりするため、潤滑油に より被膜が溶解する。その結果、銀めっき被 膜が消失した保持器外径面とハウジング内径 面との間の摩擦が増大し、焼き付きが生じや すくなるという問題がある。また、銅めっき 被膜も同様に、硫化銅が生成され、被膜の剥 離や溶解により保持器の潤滑性が劣化すると いう問題がある。

 また、本発明者らは保持器の表面にフラー ンを配合した樹脂被膜を形成する技術を提 している(特許文献3)。フラーレンを配合す ことにより耐摩耗性に優れた潤滑膜が形成 きる。
 しかしながら、硫黄系添加剤を含有する潤 系または雰囲気において、フラーレン配合 耐摩耗性潤滑膜の挙動については知られて ない。

特開2005-147306号公報

特開2002-195266号公報

特開2005-299852号公報

 本発明はこのような問題に対処するため なされたものであり、硫黄系添加剤を含有 る潤滑油に接触する環境または硫黄系化合 を含む雰囲気で使用されても、機械部品の 面に形成した被膜の剥離や被膜成分の溶出 生じにくい摺動部材用樹脂組成物およびこ 摺動部材用樹脂組成物の被膜を摺動表面に いた転がり軸受の提供を目的とする。

 本発明の摺動部材用樹脂組成物は、少なく も表面部位が摺動部材で形成された機械部 に用いられる摺動部材用樹脂組成物であっ 、該組成物は、合成樹脂にフラーレンと、 硫化モリブデンおよび二硫化タングステン ら選ばれた少なくとも1つの二硫化物とが含 まれており、組成物全体に対して、フラーレ ンが 0.1~10 容量%、二硫化物が 0.5~20 容量% まれていることを特徴とする。
 上記摺動部材用樹脂組成物は合成樹脂被膜 して用いられることを特徴とし、特に合成 脂がポリイミド系樹脂であることを特徴と る。また、ポリイミド系樹脂の中でもポリ ミドイミド樹脂であり、さらには伸び率 60 %~120%のポリアミドイミド樹脂であることを特 徴とする。

 本発明の転がり軸受は、複数の転動体と、 の転動体を保持する保持器とを備え、硫黄 添加剤を含有する潤滑油に接触する環境、 たは硫黄系化合物を含む雰囲気で使用され 転がり軸受であって、上記本発明の摺動部 用樹脂組成物の被膜を表面部位に形成した 持器を用いることを特徴とする。
 また、摺動部材用樹脂組成物被膜としては 伸び率が 60 %~120 %であるポリアミドイミ 樹脂被膜であることを特徴とする。
 また、摺動部材用樹脂組成物被膜としては 複数層からなり、保持器の摺動表面を直接 覆する第1層は、伸び率が 60 %~120 %である リアミドイミド樹脂の樹脂組成物被膜であ 、最外層が無充填の合成樹脂または固体潤 剤が配合された合成樹脂被膜で形成される とを特徴とする。
 また、上記転がり軸受に用いられる保持器 鉄系金属材料の成形体であること、上記転 体がころ形状を有することをそれぞれ特徴 する。
 本発明の転がり軸受は、回転運動を出力す クランク軸を支持し、直線往復運動を回転 動に変換するコンロッドの大端部に設けら た係合穴に取り付けられることを特徴とす 。

 本発明の摺動部材用樹脂組成物は、合成 脂にフラーレンおよび二硫化物が所定量配 されるので、微粒子形状のフラーレンと二 化物粉末とが樹脂体または被膜中に均一に 合される。その結果、これらの相乗効果に り耐摩耗性、耐剥離性が向上すると同時に 擦係数が低下する。

 合成樹脂として、伸び率が60 %~120 %であ ポリアミドイミド樹脂を用いるので、機械 品の摺動部において摩擦が小さく、摩耗や 離もないため、焼付きが発生しがたく、長 命、高信頼性が得られる。また、硫黄系添 剤を含有する潤滑油に接触する環境下にお て長期間保持器の潤滑性を維持することが きる。そのため、過酷な条件下において使 される転がり軸受の保持器表面、特に航空 用転がり軸受や風力発電装置用の転がり軸 の保持器表面、さらに自在継手のケージ表 等を覆う被覆材として好適に利用できる。

 本発明の転がり軸受は、複数の転動体と この転動体を保持する保持器とを備え、硫 系添加剤を含有する潤滑油に接触する環境 たは硫黄系化合物を含む雰囲気で使用され 転がり軸受であって、上記本発明の摺動部 用組成物被膜を該保持器の表面部位に形成 たので、被膜の剥離や潤滑油への被膜成分 溶出を抑えることができ、従来の金属めっ よりも長期間保持器の潤滑性を維持するこ ができる。

 上記転動体がころ形状を有するので、高 重の負荷を受けることができる。また、高 性である針状ころ軸受を使用することによ 、さらに高荷重の負荷を受けることができ 。

 本発明の転がり軸受は、回転運動を出力 るクランク軸を支持し、直線往復運動を回 運動に変換するコンロッドの大端部に設け れた係合穴に取り付けられ、上記保持器の 径面で案内されるころ軸受であるので、上 ポリアミドイミド樹脂被膜が従来の金属め きよりも長期間保持器の潤滑性を維持でき 保持器外径面や係合穴内径面の摩耗が防止 れ、装置全体の長寿命化を図ることができ 。

本発明の転がり軸受を使用した2サイク ルエンジンの縦断面図である。 本発明の転がり軸受の一実施例である 状ころ軸受を示す斜視図である。 摺動試験機を示す図である。 実施例5の摺動試験後のリング表面写真 である。 比較例3の摺動試験後のリング表面写真 である。 比較例8の摺動試験後のリング表面写真 である。 本発明に用いる複層被膜が2層である例 を示す模式図である。 本発明に用いる複層被膜が3層である例 を示す模式図である。

符号の説明

  1  針状ころ軸受(転がり軸受)
  1a 針状ころ軸受
  1b 針状ころ軸受
  2  保持器
  2a ポケット部
  2b 柱部
  3  針状ころ(転動体)
  4  シリンダ
  5  クランク室
  6  クランク軸
  7  コンロッド
  8  ピストン
  9  吸気孔
 10  排気孔
 11  燃焼室
 12  回転中心軸
 13  バランスウェイト
 14  ピストンピン
 15  大端部
 16  小端部
 17  リング状試験片
 18  回転軸
 19  アーム部
 20  鋼鈑
 21  エアスライダー
 22  荷重
 23  ロードセル
 24  フェルトパッド
 25  機械部品
 26  第1層
 27  最表層
 28  中間層

 本発明の摺動部材用組成物に使用できる 成樹脂としては、耐油性を有し、被膜とし ときに被膜強度が強く、耐摩耗性に優れた 料であれは、特に限定されない。そのよう 例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹 、ポリカルボジイミド樹脂、フラン樹脂、 スマレイミドトリアジン樹脂、不飽和ポリ ステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミノ スマレイミド樹脂、芳香族ポリイミド樹脂 の熱硬化性樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポ アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフ ニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサル ァイド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエ テルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド 脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、芳香族ポリ ミドイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール 脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテ ニトリル樹脂、フッ素樹脂、芳香族ポリエ テル樹脂等の熱可塑性樹脂等があげられる これらの中でも好ましいものとして、芳香 ポリアミドイミド樹脂、芳香族ポリイミド 脂、エポキン樹脂、フェノール樹脂、ポリ ェニレンサルファイド樹脂等があげられる これらの合成樹脂は、必要に応じて、繊維 や粒子状の各種充填材を配合することがで る。

 本発明において、特に好ましい合成樹脂 被膜形成能に優れるポリイミド系樹脂であ 。ポリイミド系樹脂は分子内にイミド結合 有するポリイミド樹脂、分子内にイミド結 とアミド結合とを有するポリアミドイミド 脂等が挙げられる。

 ポリイミド樹脂の中でも、芳香族ポリイミ 樹脂が好ましく、芳香族ポリイミド樹脂は 化1で示す繰返し単位を有する樹脂であり、 化1で示す繰返し単位を有する樹脂の前駆体 あるポリアミック酸も使用できる。R 1  は芳香族テトラカルボン酸またはその誘導 の残基であり、R 2  は芳香族ジアミンまたはその誘導体の残基 ある。そのようなR 1  またはR 2  としては、フェニル基、ナフチル基、ジフ ニル基、およびこれらがメチレン基、エー ル基、カルボニル基、スルホン基等の連結 で連結されている芳香族基が挙げられる。

 芳香族テトラカルボン酸またはその誘導 の例としては、ピロメリット酸二無水物、2 ,2´,3,3´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水 、3,3´,4,4´-ビフェニルテトラカルボン酸二 水物、3,3´,4,4´-ベンゾフェノンテトラカル ン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカ ボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェ ニル)メタン酸二無水物等が挙げられ、これ は単独あるいは混合して用いられる。

 芳香族ジアミンまたはその誘導体の例と ては、4,4´-ジアミノジフェニルエーテル、3 ,3´-ジアミノジフェニルスルホン、4,4´-ジア ノジフェニルメタン、メタフェニレンジア ン、パラフェニレンジアミン、4,4'-ビス(3- ミノフェノキシ)ビフェニルエーテルなどの アミン類またはジイソシアネート類が挙げ れる。

 上記芳香族テトラカルボン酸またはその誘 体と、芳香族ジアミンまたはその誘導体と 組み合わせで得られる芳香族ポリイミド樹 の例としては、表1に示す繰返し単位を有す るものが挙げられる。これらはR 1  およびR 2  にヘテロ原子を有しない樹脂である。

 表1中の芳香族ポリイミド樹脂において、分 子中に占める芳香環の比率が高いポリイミド CおよびポリイミドDが好ましく、特にポリイ ドDが本発明に好適である。芳香族ポリイミ ド樹脂ワニスの市販品としては、例えば宇部 興産社製Uワニスが挙げられる。

 本発明に使用できるポリアミドイミド樹脂 高分子主鎖内にアミド結合とイミド結合と 有する樹脂であり、ポリカルボン酸または の誘導体とジアミンまたはその誘導体との 応により得ることができる。
 ポリカルボン酸としてはジカルボン酸、ト カルボン酸、およびテトラカルボン酸が挙 られ、ポリアミドイミド樹脂は、(1)ジカル ン酸およびトリカルボン酸とジアミンとの み合わせ、(2)ジカルボン酸およびテトラカ ボン酸とジアミンとの組み合わせ、(3)トリ ルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(4)ト カルボン酸およびテトラカルボン酸とジア ンとの組み合わせにより得られる。ポリカ ボン酸とジアミンとはそれぞれ誘導体であ てもよい。ポリカルボン酸の誘導体として 酸無水物、酸塩化物が挙げられ、ジアミン 誘導体としてはジイソシアネートが挙げら る。ジイソシアネートはイソシアネート基 経日変化を避けるために必要なブロック剤 安定化したものを使用してもよい。ブロッ 剤としては、アルコール、フェノール、オ シム等が挙げられる。
 また、ポリカルボン酸とジアミンとはそれ れ芳香族および脂肪族化合物を用いること できる。本発明に使用できるポリアミドイ ド樹脂は伸び率に優れたものが好ましく、 香族化合物に脂肪族化合物を併用すること 好ましい。
 また、エポキシ化合物で変性することがで る。

 トリカルボン酸またはその誘導体の例とし は、トリメリット酸無水物、2,2´,3-ビフェ ルトリカルボン酸無水物、3,3´,4-ビフェニル トリカルボン酸無水物、3,3´,4-ベンゾフェノ トリカルボン酸無水物、1,2,5-ナフタレント カルボン酸無水物、2,3-ジカルボキシフェニ ルメチル安息香酸無水物等が挙げられ、これ らは単独あるいは混合して用いられる。
 量産化されており、工業的利用のしやすさ らトリメリット酸無水物が好ましい。

 テトラカルボン酸またはその誘導体の例 しては、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'- ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、 3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水 、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水 物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水 、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無 物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無 物、4,4'-スルホニルジフタル酸二無水物、m- -フェニル-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水 、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3 -ヘキサフルオロ-2,2-ビス(2,3-または3,4-ジカル ボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス( 2,3-または3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン 二無水物、2,2-ビス[4-(2,3-または3,4-ジカルボ シフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、 1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス[4-(2,3-また 3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロ ン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェ ル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水 、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシ ロ-[2,2,2]-オクト-7-エン-2:3:5:6-テトラカルボ 酸二無水物等が挙げられる。

 ジカルボンまたはその誘導体の例として 、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ア ライン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカ 二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、イソフ ル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレ ジカルボン酸、オキシジ安息香酸、ポリブ ジエン系オリゴマーの両末端をカルボキシ 基とした脂肪族ジカルボン酸(日本曹達(株) Nisso-PB,Cシリーズ、宇部興産(株)製 Hycar-RLP,C Tシリーズ、Thiokol社製 HC-polymerシリーズ、Gene ral Tire社製 Telagenシリーズ、Phillips Petroleum 製 Butaretzシリーズ等)、カーボネートジオー ル類(ダイセル化学(株)製の商品名PLACCEL、CD-20 5、205PL、205HL、210、210PL、210HL、220、220PL、220H L)の水酸基当量以上のカルボキシル当量とな ジカルボン酸を反応させて得られるエステ ジカルボン酸等が挙げられる。

 ジアミンまたはその誘導体の例として、 イソシアネートとしては、4,4'-ジフェニル タンジイソシアネート、トリレンジイソシ ネート、キシリレンジイソシアネート、4,4'- ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4'-[ 2,2-ビス(4-フェノキシフェニル)プロパン]ジイ ソシアネート、ビフェニル-4,4'-ジイソシアネ ート、ビフェニル-3,3'-ジイソシアネート、ビ フェニル-3,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジメチ ビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、2,2'-ジ チルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、3,3'- ジエチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、 2,2'-ジエチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネー 、3,3'-ジメトキシビフェニル-4,4'-ジイソシ ネート、2,2'-ジメトキシビフェニル-4,4'-ジイ ソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネ ト、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ヘ サメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメ ルヘキサメチレンジイソシアネート、イソ ロンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシ ルメタンジイソシアネート、トランスシクロ ヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水添m-キシ レンジイソシアネート、リジンジイソシア ート、カーボネートジオール類(ダイセル化 (株)製の商品名PLACCEL、CD-205、205PL、205HL、210 、210PL、210HL、220、220PL、220HL)の水酸基当量以 上のイソシアネート当量となるジイソシアネ ートを反応させて得られるウレタンジイソシ アネート等のジイソシアネート類が挙げられ る。

 ジアミン類としては、ジメチルシロキサ の両末端にアミノ基が結合したシロキサン アミン(シリコーンオイルX-22-161AS(アミン当 450)、X-22-161A(アミン当量840)、X-22-161B(アミン 当量1500)、X-22-9409(アミン当量700)、X-22-1660B-3( ミン当量2200)(以上、信越化学工業社製、商 名)、BY16-853(アミン当量650)、BY16-853B(アミン 量2200)、(以上、東レダウコーニングシリコ ン社製、商品名))、両末端アミノ化ポリエ レン、両末端アミノ化ポリプロピレン等の 末端アミノ化オリゴマーや両末端アミノ化 リマー、オキシアルキレン基を有するジア ン(ジェファーミンDシリーズ、ジェファーミ ンEDシリーズ、ジェファーミンXTJ-511、ジェフ ァーミンXTJ-512、いずれもサンテクノケミカ 社商品名)等が挙げられる。

 芳香族ポリイミド樹脂と異なり、前駆体 経ることなく樹脂溶液の状態でアミド結合 イミド結合との繰返し単位を有するポリア ドイミド樹脂が本発明において特に好まし 。また、ポリアミドイミド樹脂のジイソシ ネート変性、BPDA変性、スルホン変性、ゴム 変性樹脂を使用できる。ポリアミドイミド樹 脂ワニスの市販品としては、例えば日立化成 社製HPC5020、HPC7200等が挙げられる。

 本発明においてポリアミドイミド樹脂は 樹脂被膜の伸び率が 60%~120%のポリアミドイ ミド樹脂が好ましい。伸び率が 60%未満であ と基材との密着性に劣り剥離しやすくなり 硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する 境下において金属基材の剥離または溶出が じやすくなる。伸び率が 120%をこえると耐 性が低下したり潤滑油に膨潤しやすくなっ りする。樹脂被膜の伸び率が 60%~120%のポリ アミドイミド樹脂の市販品としては、例えば 日立化成社製、商品名HPC7200-30が挙げられる

 本発明においてポリアミドイミド樹脂被膜 伸び率は以下の方法で測定される。
 ポリアミドイミド樹脂溶液を、アセトン脱 後窒素ガスブローにより表面清浄化された ラス基板上に塗布し、80℃で 30 分、その  150℃で 10 分予備乾燥を行ない、最後にポ リアミドイミド樹脂の分子構造に適した硬化 温度で 30 分乾燥する。硬化塗膜をガラス基 板より剥離して 80 ± 8μm 厚さの樹脂フィ ムを得て、このフィルムを 10 mm × 60 mm  短冊状の試験片とし、チャック間距離 20 m m 、引張速度 5 mm/分で室温にて引張試験機 より伸び率(%)を測定する。

 ポリイミド系樹脂に配合されるフラーレン 、炭素5員環と6員環から構成され、球状に じた多様な多面体構造を有する炭素分子で る。グラファイト、ダイヤモンドに続く第3 炭素同素体として1985年にH.W.KrotoとR.E.Smalley によって発見された新規な炭素材料である 代表的な分子構造としては、60個の炭素原 が12個の五員環と20個の六員環からなる球状 切頭正二十面体を構成する、いわゆるサッ ーボール状の構造のC 60  が挙げられ、同様に70個の炭素原子からな C 70 、さらに炭素数の多い高次フラーレン、例え ばC 76 、C 78 、C 82 、C 84 、C 90 、C 94 、C 96  などが存在する。これらのうちのC 60  およびC 70  が代表的なフラーレンである。また、これ を反応させて多量体が得られる。本発明に いては、フラーレンであれば球状、あるい 多量体のいずれも使用できる。

 フラーレンの製造法には、レーザ蒸発法 抵抗加熱法、アーク放電法、熱分解法など あり、具体的には、例えば特許第2802324号に 開示されており、これらは、減圧下あるいは 不活性ガス存在化、炭素蒸気を生成し、冷却 、クラスター成長させることによりフラーレ ン類を得ている。

 一方、近年、経済的で効率のよい大量製造 として燃焼法が実用化されている。燃焼法 例としては、減圧チャンバー内にバーナー 設置した装置を使用し、系内を真空ポンプ て換気しつつ炭化水素原料と酸素とを混合 てバーナーに供給し、火炎を生成する。そ 後、上記火炎により生成した煤状物質を下 に設けた回収装置により回収する。この製 法において、フラーレンは煤中の溶剤可溶 として得られ、溶剤抽出、昇華等により単 される。得られたフラーレンは通常C 60 、C 70  および高次フラーレンの混含物であり、さ に精製してC 60 、C 70  等を単離することもできる。
本発明で用いるフラーレンとしては、構造や 製造法を特に限定するものではないが、特に C 60 、C 70  の炭素数のもの、あるいはこれらの混合物 あるミックスフラーレンが好ましい。

 フラーレンは固体状の配合剤として、ある はフラーレンを有機溶剤に溶解、分散させ 得られる配合剤として用いることができる いずれの場合においても、フラーレンはC 60 、C 70  およぴ高次フラーレン単独でも、混含状態 も用いることが可能であるが、樹脂への分 性等の観点から、これらを混合状態で用い ことが好ましい。
さらにより分散性を良好にするため、混合時 の平均粒径は 100μm 以下、好ましくは 50μm 以下、より好ましくは 10μm 以下である。

 摺動部材用組成物に対するフラーレンの 合割合は、組成物全体に対して、固体状の ラーレンを 0.1~10 体積%、好ましくは 0.1~5 体積%配合する。0.1 体積%未満では十分な耐 耗性を得ることができず、10 体積%をこえ と分散不良となり耐摩耗性が悪化する。

 二硫化モリブデン、二硫化タングステン 粉末状のものを用いることができる。分散 や被膜の表面平滑性から、粒径は 10μm 以 、好ましくは 5μm 以下である。摺動部材 組成物に対する二硫化モリブデン、二硫化 ングステンの配合割合は、組成物全体に対 て、0.5~20 体積%、好ましくは 0.5~15 体積%配 合する。0.1 体積%未満では十分な摩擦摩耗特 性を得ることができず、20 体積%をこえると 摩耗性が悪化する。

 本発明の摺動部材用組成物の好ましい態様 しては、ポリイミド系樹脂に、フラーレン 、二硫化モリブデンおよび二硫化タングス ンから選ばれた少なくとも1つの二硫化物と が分散配合された樹脂組成物である。
 上記摺動部材用組成物において、ポリイミ 系樹脂は、樹脂被膜の伸び率が 60%~120%のポ リアミドイミド樹脂が好ましい。このポリア ミドイミド樹脂は単独でも摺動部材用被膜と することができる。また、保持器表面に複層 被膜を形成するときの第1層の樹脂組成物被 を構成する樹脂とすることができる。

 複層被膜とする場合、摺動部材の摺動表面 直接被覆する第1層は、上記伸び率が 60 %~1 20 %であるポリアミドイミド樹脂の樹脂組成 被膜であり、最外層が無充填の合成樹脂ま は固体潤滑剤が配合された合成樹脂被膜で 成される。
 複層被膜に対する充填材の配合割合は、各 の被膜全体に対して、0.1~20 体積%、好まし は 0.5~10 体積%配合する。0.1 体積%未満で 十分な被膜強化を得られないため耐剥離性 付与できず、また 20 体積%をこえると、逆 密着力が低下する。ここでいう充填材とは ラーレンや炭化ケイ素、酸化ケイ素などの 機微粒子等であり、粉末状のものを用いる とができ、分散性や被膜の表面平滑性から 粒径は 10μm 以下、好ましくは 5μm 以下 ある。

 本発明において複層被膜は、2層目以降は 必要に応じ固体潤滑剤を配合し、その固体潤 滑剤としては、二硫化モリブデン、二硫化タ ングステン、黒鉛、PTFE樹脂などが挙げられ それぞれ粉末状のものを用いることができ 。分散性や被膜の表面平滑性から、粒径は  10μm 以下、好ましくは 5μm 以下である。複 層被膜に対する固体潤滑剤の配合割合は、被 膜全体に対して、0.5~30 体積%、好ましくは 0 .5~15 体積%配合する。0.1 体積%未満では十分 摩擦摩耗特性を得ることができず、30 体積 %をこえると被膜強度が極端に低下し、剥離 異常摩耗が発生する。

 本発明に用いる複層被膜の構成を図面に基 いて説明する。図7は複層被膜が2層である を示す模式図である。図7に示すように複層 膜は機械部品25を被覆し、充填材が配合さ た合成樹脂被膜である第1層26と、第1層26を 覆し、充填材と固体潤滑剤または固体潤滑 のみが配合された合成樹脂被膜である最表 27とからなる2層で構成される。
 図8は複層被膜が3層である例を示す模式図 ある。複層被膜は2層での構成に限定される のではなく、図8に示すように例えば機械部 品25を被覆する第1層26と、最表層27との間に 表層27よりも固体潤滑剤の配合量が少ない中 間層28を形成し、固体潤滑剤の配合量を傾斜 せることも可能である。

 本発明の樹脂組成物より得られる樹脂被膜 またはこの樹脂被膜を用いる複層被膜を、 黄成分を含む潤滑油と接触する環境下また 硫黄系化合物を含む雰囲気下において溶出 生じにくい被膜として、転がり軸受の保持 に適用する場合について説明する。
 上記転がり軸受について鋭意検討の結果、 着性と耐熱性とに優れた上記ポリイミド系 脂被膜は、硫黄成分を含む潤滑油に浸漬し も膨潤したり、溶解したりすることなく、 のため耐硫化性の低い金属であっても表面 ポリイミド系樹脂被膜を形成することによ 、潤滑油中への金属溶出が生じにくいこと わかった。このため、ポリイミド系樹脂被 を表面に有する保持器を作製し、この保持 を取り付けることにより硫黄成分を含む潤 油と接触する環境下において溶出が生じに い被膜を有する転がり軸受を得ることが可 となった。

 本発明の転がり軸受の使用態様を図面に づいて説明する。図1は本発明の転がり軸受 として針状転がり軸受を使用した2サイクル ンジンの縦断面図である。図1に示すように2 サイクルエンジンは、ガソリンと、エンジン オイルである潤滑油とを混合した混合気の燃 焼により直線往復運動を行なうピストン8と 回転運動を出力するクランク軸6と、ピスト 8とクランク軸6とを連結し、直線往復運動 回転運動に変換するコンロッド7とを有する クランク軸6は、回転中心軸12を中心に回転 、バランスウェイト13によって回転のバラ スをとっている。

 コンロッド7は、直線状棒体の下方に大端部 15を、上方に小端部16を設けたものからなる クランク軸6は、コンロッド7の大端部15の係 穴に取り付けられた針状ころ軸受1aを介し 回転自在に支持されている。また、ピスト 8とコンロッド7を連結するピストンピン14は コンロッド7の小端部16の係合穴に取り付け れた針状ころ軸受1bを介して回転自在に支 されている。
 ガソリンと潤滑油とを混合した混合気は、 気孔9からクランク室5へ送り込まれてから ピストン8の上下動作に応じてシリンダ4の上 方の燃焼室11へ導かれ燃焼される。燃焼され 排気ガスは排気孔10から排出される。

 図2は本発明の転がり軸受の一実施例であ る針状ころ軸受を示す斜視図である。図2に すように、針状ころ軸受1は複数の針状ころ3 と、この針状ころ3を一定間隔、もしくは不 間隔で保持する保持器2とで構成される。内 および外輪は設けられず、直接に、保持器3 の内径側にクランク軸6やピストンピン14等の 軸が挿入され、保持器3の外径側がハウジン であるコンロッド7の係合穴に嵌め込まれる( 図1参照)。内外輪を有さず、長さに比べて直 が小さい針状ころ3を転動体として用いるの で、この針状ころ軸受1は、内外輪を有する 般の転がり軸受に比べて、コンパクトなも となる。

 保持器2には、針状ころ3を保持するための ケット2aが設けられ、各ポケットの間に位置 する柱部2bで、各針状ころ3の間隔を保持する 。保持器2の表面部位にはポリイミド系樹脂 膜が形成されている。摺動部材用樹脂被膜 形成する保持器の表面部位は潤滑油と接触 る部位であり、針状ころ3と接触するポケッ 2aの表面を含めた保持器2の全表面が好まし 。
 また、保持器2の表面部位に加えて転動体で ある針状ころ3の表面またはコンロッド7の内 面にも同様の摺動部材用樹脂被膜を形成す ことができる。

 本発明において転がり軸受に用いる転動 は、ころ形状を有するので、本発明の転が 軸受は上記コンロッドの小端部および大端 に設けられた係合穴に取り付けられ、ピス ンピンおよびクランク軸を支持することが き、軸受投影面積が小さいにもかかわらず 高荷重の負荷を受けることができる。特に 高剛性である針状ころを転動体として使用 た転がり軸受は、ころを転動体として使用 た転がり軸受よりも、さらに高荷重の負荷 受けることができる。

 本発明の転がり軸受は、回転運動を出力す クランク軸を支持し、直線往復運動を回転 動に変換するコンロッドの大端部に設けら た係合穴に取り付けられ、上記被膜を有す 保持器の外径面で案内されるころ軸受であ ので、被膜の剥離や潤滑油への金属の溶出 ほとんどなく、従来の金属めっきよりも長 間保持器の潤滑性を維持することができ、 持器外径面や係合穴内径面の摩耗が防止さ 、装置全体の長寿命化を図ることができる
 また、本発明の転がり軸受は、図1で示した ように、直線往復運動を出力するピストンピ ンを支持し、直線往復運動を回転運動に変換 するコンロッドの小端部に設けられた係合穴 に取り付けることもできる。

 本発明の転がり軸受は、硫黄系添加剤を 合した潤滑油に接触する環境下において適 可能である。潤滑油に接触する環境として 、例えば上記したように、転がり軸受が2サ イクルまたは4サイクルエンジンのコンロッ に取付けられて、ガソリンとエンジンオイ である潤滑油とを混合した混合気またはエ ジンオイルに接触する場合や、転がり軸受 保持器ポケット部等への注油等により接触 る場合が挙げられる。

 硫黄系添加剤とは、硫黄系化合物を含む添 剤であり、この添加剤種類としては、酸化 止剤、防錆剤、極圧剤、清浄分散剤、金属 活性剤、摩耗防止剤などが挙げられる。
 硫黄系化合物を含む添加剤が添加される潤 油としては、鉱油、合成油、エステル油、 ーテル油などが挙げられる。
 硫黄系化合物としては、例えば、ジアルキ ジチオリン酸亜鉛(以下、ZnDTPと記す)、ジア リルジチオリン酸亜鉛等のチオリン酸塩、硫 化テルペン、フェノチアジン、メルカプトベ ンゾチアゾール、石油スルホン酸塩、アルキ ルベンゼンスルホン酸塩、ポリブテン-P 2 S 5  反応生成物塩、有機スルホン酸のアンモニ ム塩、アルカリ土類金属の有機スルホン酸 、1-メルカプトステアリン酸等のメルカプ 脂肪酸類あるいはその金属塩、2,5-ジメルカ ト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプトチア アゾール等のチアゾール類、2-(デシルジチ )-ベンズイミダゾール、2,5-ビス(ドデシルジ チオ)-ベンズイミダゾール等のジスルフィド 化合物、ジラウリルチオプロピオネート等 チオカルボン酸エステル系化合物、二硫化 ベンジル、二硫化ジフェニル、硫化スパー 油などの硫化油脂、硫化オレフィン、硫化 肪エステルなどの硫化エステル、ジベンジ ジサルファイド、アルキルポリサルファイ 、オレフィンポリサルファイド、ザンチッ サルファイド等のサルファイド、カルシウ スルホネート、マグネシウムスルホネート アルキルジチオリン酸アミン等を挙げるこ ができる。
 上記硫黄系化合物の中でコンロッド用のこ 軸受に影響を与えやすい化合物はZnDTPであ 。

 本発明において「硫黄系添加剤を含有する 滑油に接触する環境下において剥離または 出が生じにくい」とは、例えば、3 mm×3 mm 20 mm の寸法(表面積 258 mm 2  )を有するSCM415製基材片 に上記被膜を形成 た試験片 3 個をZnDTPを 1 重量%含有させた ポリ-α-オレフィン 2.2 g 中に 150℃にて 200  時間浸漬処理したときに、試験片から上記 滑油中に溶出する被膜成分量が蛍光X線測定 装置による測定にて、潤滑油中で 200 ppm 以 下であることをいう。

 転がり軸受に用いる保持器の材料としては 特に限定されるものでなく、鉄系金属材料 銅系金属材料、アルミニウム系金属材料、 脂材料を使用することができる。
 鉄系金属材料としては、肌焼き鋼(SCM)、冷 圧延鋼(SPCC)、熱間圧延鋼(SPHC)、炭素鋼(S25C~S5 5C)、ステンレス鋼(SUS304~SUS316)、軟鋼(SS400)等 使用できる。
 また、表面に摺動部材用樹脂被膜を後加工 て形成した保持器を用いることから、保持 本体としては、軸受鋼、浸炭鋼、または機 構造用炭素鋼を用いることができ、これら 中で耐熱性が高く高荷重に耐える剛性を有 る浸炭鋼を用いることが好ましい。浸炭鋼 しては例えばSCM415等を挙げることができる

 また、銅系金属材料としては、銅-亜鉛合金 (HBsC1、HBsBE1、BSP1~3)、銅-アルミニウム-鉄合金 (AlBC1)等、アルミニウム系金属としてはアル -シリコン合金(ADC12)等を使用できる。
 また、ポリフェニレンスルフィド、ポリエ テルエーテルケトン等の樹脂材料を使用す ことができる。樹脂材料に補強材としてガ ス繊維や炭素繊維等を含有したものも使用 きる。

 本発明に用いる摺動部材用組成物を、転が 軸受保持器用の被膜とする場合は、次の方 で被膜を形成させることができる。
 まず、鉄系金属材料で形成された基材とな 保持器を十分に洗浄し、表面の汚染を除去 る。この洗浄方法としては、有機溶剤によ 浸漬洗浄、超音波洗浄、蒸気洗浄、酸・ア カリ洗浄等による方法が挙げられる。
 被膜の密着性を向上させる目的で、前処理 してショットブラスト(ショットピーニング 、WPC等を含む)、化学的エッチング、リン酸 被膜処理を施すことも可能である。基材の 面粗さは Ra = 0.3 以上の範囲で設定するこ とが可能であり、好ましくは Ra = 0.5~1.0 で ある。Ra = 0.3 未満であると、十分なアンカ ー効果をえることができず、密着性を向上す ることができない。一方、基材の表面粗さが 大きい場合は仕上がり表面が粗くなるが、研 磨などの機械加工により表面粗さを小さく調 整すれば保持器として使用可能となる。また 、Ra = 0.5~1.0 であれば十分な密着性と機械 工を施すことなく小さな表面粗さを得るこ が可能である。
 次いで、スプレーコーティング法、ディッ (浸漬)コーティング法、静電塗装法、タン ラーコーティング法、電着塗装法等によっ 、摺動部材用組成物の被膜を保持器表面に 成させる。好ましい被膜の厚さは、1~100μm  より好ましくは 1~50μm である。また、被 形成の過程で、余分に付着したワニスはふ 取り、遠心分離、エアーブロー等の物理的 化学的方法により除去し、所望の厚さに調 することもできる。
 被膜形成後は、加熱処理によって溶剤除去 乾燥、融解、架橋等を行ない、表面に被膜 形成された保持器を完成させる。膜厚を増 場合には、重ね塗りをしてもよい。また、 膜完成後に機械加工やタンブラー処理等を なうことも可能である。

 本発明の転がり軸受の形式は、ラジアル軸 、スラスト軸受のいずれの場合であっても い。また、転動体の形状は特に限定されな が、特に上記ころ形状、針状ころ形状の場 に、この発明の効果をより享受することが きる。上記ころ形状には円筒形の他、円す ころ、球面ころなどが含まれる。
 本発明の転がり軸受は、上記コンロッド用 、圧縮機、特にエアコンやカーエアコン等 空気調和機用の圧縮機など、希薄な潤滑条 で使用される転がり軸受に好適に使用でき 。
 また、航空機用転がり軸受、風力発電装置 主軸支持用転がり軸受、自在継手にも好適 使用できる。

 本発明の実施例1~実施例7と比較例3~比較例10 に用いた材料を一括して示すと次の通りであ る。[ ]内は表1および表2に示す略称である。
(1)ポリアミドイミド樹脂ワニス[PAI]
 日立化成工業社製HPC-5020-30、伸び率:70%
(2)芳香族ポリイミド樹脂ワニス[PI]
 宇部興産社製Uワニス-A
(3)混合フラーレン[ミックスフラーレン]
 フロンティアカーボン社製混合フラーレン C 60 (直径:0.71 nm )が約 60 重量%、C 70 (長軸径:0.796 nm、短軸径:0.712 nm)が約 25 重 %で残部が高次フラーレンの混合物である。
(4)二硫化モリブデン粉末[MoS 2 -0.5μm ]
 日本モリブデン社製M5、平均粒径 0.5μm
(5)二硫化タングステン粉末[WS 2 -1μm ]
 日本潤滑剤社製WS2A、平均粒径 1μm
(6)ポリテトラフルオロエチレン粉末[PTFE-0.3μm  ]
 喜多村社製KD-1000ASディスパージョン(溶剤:N- メチル-2-ピロリドン(NMP))、平均粒径 0.3 μm
(7)黒鉛粉末[黒鉛-6μm ]
 ロンザ社製KS-6、平均粒径 6 μm

実施例1、実施例3~実施例7および比較例3~比較 例10
 ポリアミドイミド樹脂ワニス(溶剤:NMP)の固 分に対し各種充填材を表2および表3に記載 割合でボールミルで十分に均一分散するま 混合して、混合液を摩擦試験用SUJ2リング〔 径 40 mm ×内径 20 mm ×厚さ 10 mm (副曲 R 60 )、ショットブラストにより表面粗さRa 0.7 μm:図3の17〕の外径面にスプレー法にて ーティングした。また、潤滑油浸漬試験用 してSPCC角棒( 3 mm × 3 mm × 20 mm )の表面 にディッピング法によりコーティングした。 コーティング後 100℃で 1 時間、さらに 150 ℃で 1 時間乾燥し、250℃で 1 時間焼成し 。スプレー回数を調整し、被膜厚みが 20~30 m になるようにした。なお、フラーレンを 合したコーティング液は、トルエンとN-メチ ル-2-ピロリドンの混合溶剤(混合重量比率 50: 50 )にフラーレンを 5%濃度で溶解させた濃縮 液をあらかじめ用意し、これをポリアミドイ ミド樹脂ワニスに所定濃度となるよう添加し 調製した。なお、表2および表3に記載の各成 の配合割合は固形分での割合でありすべて 積%である。

<摺動試験>
 図3に示す摺動試験機(サバン型摩擦摩耗試 機)を用いた。
 得られたリング状試験片を用いて摺動試験 行なった。図3は摺動試験機を示す図である 。図3(a)は正面図を、図3(b)は側面図をそれぞ 表す。
 回転軸18にリング状試験片17を取り付け、ア ーム部19のエアスライダー21に鋼鈑20を固定す る。リング状試験片17は所定の荷重22を図面 方から印加されながら鋼鈑20に回転接触する と共に潤滑油が含浸されたフェルトパッド24 り潤滑油がリング状試験片17の外径面に供 される。リング状試験片17を回転させたとき に発生する摩擦力はロードセル23により検出 れる。また、所定時間経過後、リング状試 片17の外径面に形成されたポリアミドイミ 樹脂塗膜の状態は目視により、〇:顕著な摩 および剥離なし、△:顕著な摩耗はないが剥 離あり、×:摩耗大の 3 段階で表記した。
 鋼鈑20はSCM415浸炭焼入れ焼戻し処理品(Hv 700  、表面粗さ Ra 0.01μm )を、潤滑油はモービ ルベロシティオイルNo.3(VG2、エクソンモービ 社製)をそれぞれ用いた。荷重は 50 N 、滑 り速度は 5.0 m /秒、試験時間は 30 分であ 。摩擦係数は試験終了前 10 分間の平均値 して表した。結果を表2および表3に示す。

 また、得られたSPCC角棒を用いて潤滑油浸 漬試験を行なった。被膜を施した角棒 3 本  150℃の潤滑油〔ポリ-α-オレフィン:ルーカ ントHL-10(三井化学社製)にZnDTP(LUBRIZOL677A、LUBRI ZOL社製)を 1 重量%添加したもの〕 2.2 g に 200 時間浸漬した後、潤滑油中に溶出した被 膜成分の濃度を測定した。濃度測定は、蛍光 X線測定〔蛍光X線測定装置:Rigaku ZSX100e(リガ 社製)〕により定量した。結果を表2および表 3に示す。

実施例2
 芳香族ポリイミド樹脂ワニス(溶剤:N-メチル -2-ピロリドン)を用いて、表2に示す割合でフ ーレンを配合し、コーティング後の焼成温 を 350℃とする以外は実施例1と同様の方法 試験片を作製し、実施例1と同様に評価した 。結果を表2に示す。

比較例1
 実施例1と同様の試験片に、電気めっきによ り下地として銅めっき(めっき厚: 5μm )を施 、さらに表層に銀めっき(めっき厚: 20μm ) 施した。得られた試験片を実施例1と同様に 評価した。結果を表3に示す。

比較例2
 実施例1と同様の試験片に、電気めっきによ り銅めっき(めっき厚: 25μm )を施した。得ら れた試験片を実施例1と同様に評価した。結 を表3に示す。

 また、実施例5の摺動試験後のリング表面写 真を図4に、比較例3の摺動試験後のリング表 写真を図5に、比較例8の摺動試験後のリン 表面写真を図6にそれぞれ示す。
 表3に示す結果から明らかなように、従来か ら使用されている金属めっきである比較例1 よび比較例2は潤滑油浸漬試験において潤滑 に金属成分が溶出する。特に、銅めっき時 銅の溶出が多い結果となった。添加剤を含 ない樹脂被膜を形成した比較例3は摩擦係数 は小さいが、摩擦試験中に剥離を生じた(図5 照)。フラーレンのみを配合した比較例4は 擦試験中の剥離はないものの、樹脂単体に べ摩擦係数が増加した。フラーレンに加え リテトラフルオロエチレンを配合した比較 5は、摩擦係数は低下したが剥離を生じ、黒 を配合した比較例6は摩耗が大きかった。比 較例7はフラーレンの配合量が少ないため、 剥離性が改善されない。比較例8および比較 9は、フラーレンまたは二硫化モリブデンの 配合量が所定量より多いため、分散が悪く、 またバインダである樹脂分が少なく添加剤を 保持しきれないため摩耗量が増大した。比較 例8では摩耗痕が見られた(図6参照)。さらに 硫化モリブデンのみを配合した比較例10は樹 脂単体(比較例3)とほとんど同じ特性であった 。

 一方、表2に示す、実施例1~実施例7は、フ ラーレンと、二硫化モリブデンまたは二硫化 タングステンを所定量配合したポリイミド系 樹脂被膜であるので、摩擦係数が低く、摩擦 試験中の剥離や顕著な摩耗は見られなかった 。実施例5の摺動試験後のリング表面には摩 痕も剥離も見られなかった(図4参照)。また 潤滑油浸漬試験においても被膜成分の潤滑 への溶出は見られなかった。

実施例8
 外径 40 mm ×内径 20 mm ×厚さ 10 mm (副 率R 60 )のSUJ製リングの外周面にポリアミド イミド樹脂ワニスを塗布後、乾燥してポリア ミドイミド樹脂被膜を 20~30μm の厚さで形成 した。用いたポリアミドイミド樹脂ワニスは 伸び率が 101%あるHPC7200-30であり、塗膜形成 件は 80℃で 30 分、その後 150℃で 10 分 備乾燥を行ない、最後に 200℃で 30 分乾燥 した。得られたリング状試験片を用いて以下 に示す摺動試験を行なった。結果を表4に示 。

<摺動試験>
 図3に示す実施例1で用いた摺動試験機(サバ 型摩擦摩耗試験機)を用いた。試験条件は実 施例1と同様である。評価は、所定時間経過 、リング状試験片17の外周面に形成されたポ リアミドイミド樹脂塗膜が剥離している部分 の数を剥離点数として目視で測定した。

比較例11
 ポリアミドイミド樹脂ワニスとして、伸び が 14%のHPC4250-30を用いた。リング状試験片 の塗膜形成条件は 80℃で 30 分、その後 1 50℃で 10 分予備乾燥を行ない、最後に 180 で 60 分乾燥してポリアミドイミド樹脂被 を 20~30μm の厚さで形成した。このリング 試験片を用いる以外は実施例8と同様にして 動試験を行なった。結果を表4に示す。

比較例12
 ポリアミドイミド樹脂ワニスとして、伸び が 10%のHPC9000-21を用いる以外は比較例11と 様の条件で被膜形成して同様の測定条件で 動試験を行なった。結果を表4に示す。

 伸び率が大きいポリアミドイミド樹脂被膜( 実施例8)は剥離点数が少ない、すなわち摺動 の損傷が少ないため摩擦係数も小さくなっ いる。伸び率が小さいポリアミドイミド樹 被膜(比較例11および比較例12)は剥離点数が く、摺動面が損傷し粗さが大きくなるため 擦係数が実施例8よりも大きくなっている。

実施例9
 ポリアミドイミド樹脂被膜の化学的安定性 評価するために潤滑油浸漬試験を行なった
 3 mm×3 mm×20 mm の寸法(表面積 258 mm 2  )を有するSCM415製基材片 3 個の全表面にポ アミドイミド樹脂( 90 体積%)にMoS 2  ( 10 体積%)を配合した被膜を形成して試験 とした。ポリアミドイミド樹脂ワニスは実 例8で用いたHPC7200-30であり、塗膜形成条件  80℃で 30 分、その後 150℃で 10 分予備 燥を行ない、最後に 200℃で 30 分乾燥して  20μm 厚さの被膜とした。なお、MoS 2  は被膜が溶出したときの検出元素として、 イゾー社製ニチモリAパウダー(商品名)を添 した。この試験片を以下に示す潤滑油浸漬 験に供し、被膜成分が潤滑油中に溶出する を測定した。結果を表5に示す。

<潤滑油浸漬試験>
 ZnDTP(LUBRIZOL社製:LUBRIZOL677A)を 1 重量%含有さ せた潤滑油〔ポリ-α-オレフィン:ルーカントH C-10(三井化学社製) 2.2 g 中に試験片 3 個を  150℃にて 200 時間浸漬処理したときに、試 験片から上記潤滑油中に溶出する被膜成分量 を蛍光X線測定〔蛍光X線測定装置:Rigaku ZSX100e (リガク社製)〕により定量した。

比較例13
 3 mm×3 mm×20 mm の寸法(表面積 258 mm 2  )を有するSCM415製基材片 3 個に銅めっき処 を施し 30μm の銅被膜を形成して、試験片 得た。この試験片について実施例9と同様の 測定を実施した。結果を表5に示す。

比較例14
 3 mm×3 mm×20 mm の寸法(表面積 258 mm 2  )を有するSCM415製基材片 3 個に銅めっき処 を施し 5μm の銅被膜を下地被膜として形 した後、さらに銀めっき処理を施し 25μm  銀被膜を形成して、試験片を得た。この試 片について実施例9と同様の測定を実施した 結果を表5に示す。

 ポリアミドイミド樹脂被膜を用いることに り、金属の溶出量がなく化学的に安定した 膜が得られる。
 表4および表5の結果から、伸び率が大きい リアミドイミド樹脂被膜は耐剥離性を備え 被膜を得ることができ、保持器は潤滑性を り長期間維持することができる。

 実施例10~実施例17は複層膜を用いた実施例 結果である。
 以下、実施例10~実施例17および比較例15~比 例23に用いた材料を一括して以下に示すが、 ポリアミドイミド樹脂ワニス[PAI]、芳香族ポ イミド樹脂ワニス[PI]、混合フラーレン[ミ クスフラーレン]、二硫化モリブデン粉末[MoS 2 -0.5μm ]、二硫化タングステン粉末[WS 2 -1μm ]は、実施例1~実施例7と同じ材料を用い 。その他の材料を示すと次のとおりである [ ]内は表6に示す略称である。
(1)炭化ケイ素[SiC]
 添川理化学社製試薬、平均粒径 1μm
(2)酸化ケイ素[SiO 2  ]
 アドマテックス社製 アドマファインSO-C5  均粒径 1.6μm

実施例10~13、15~17、および比較例23
 ポリアミドイミド樹脂ワニス(溶剤:NMP)の固 分に対し各種充填材を表6に記載の割合でボ ールミルで十分に均一分散するまで混合して 、混合液を摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm  ×内径 20 mm ×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )、 ョットブラストにより表面粗さRa 0.7 μm : 3の17〕の外径面にスプレー法にて2層からな る被膜をコーティングした。また、潤滑油浸 漬試験用としてSPCC角棒( 3 mm×3 mm×20 mm )の 表面にディッピング法により2層からなる被 をコーティングした。
 上記各試験片は 1 層目をコーティング後  100℃で 1 時間乾燥し、さらにその上に 2  目をコーティングし、100℃で 1 時間、さら に 150℃で 1 時間乾燥し、250℃で 1 時間焼 成した。なお、表2に記載の各成分の配合割 は固形分での割合でありすべて体積%である 被膜の厚さは 1 層目が 20μm、2 層目が 10 μmとなるように各試験片に形成した。
 なお、フラーレンを配合したコーティング は、トルエンとNMPとの混合溶剤(混合重量比 率 50:50 )にフラーレンを 5 重量%濃度で溶 させた濃縮液をあらかじめ用意し、これを リアミドイミド樹脂ワニスに所定濃度とな よう添加し調製した。
 上記処理によりリング状試験片および角棒 試験片を得た。得られたリング状試験片を いて以下に示す摩擦試験に供し、摩擦係数 試験後の被膜の状態を評価した。また得ら た角棒状試験片を用いて以下に示す潤滑油 漬試験に供し、潤滑油中に溶出した被膜成 の濃度を測定した。結果を表6に併記する。

<摩擦試験>
 実施例1で用いた図3に示す摺動試験機(サバ 型摩擦摩耗試験機)を用い、試験条件は実施 例と同様の条件で行なった。摩擦係数は試験 終了前 10 分間の平均値として表した。
<潤滑油浸漬試験>
 また、得られた角棒状試験片を用いて潤滑 浸漬試験を行なった。被膜処理を施した角  3 本を 150 ℃の潤滑油〔ポリ-α-オレフィ ン:ルーカントHL-10(三井化学社製)にZnDTP(LUBRIZO L677A、LUBRIZOL社製)を 1 重量%添加したもの〕 2.2 g に 200 時間浸漬した後、潤滑油中に 出した被膜成分の濃度を測定した。濃度測 は、蛍光X線測定〔蛍光X線測定装置:Rigaku ZSX 100e(リガク社製)〕により定量した。

実施例14[樹脂2層]
 芳香族ポリイミド樹脂ワニス(溶剤:NMP)を用 て、表2に示す割合で 1 層目にはフラーレ を配合した被膜、2 層目には二硫化モリブ ンを配合した被膜をコーティングし、コー ィング後の焼成温度を 350℃とする以外は 施例10と同様の方法で試験片を作製し、実施 例10と同様に評価した。結果を表6に併記する 。

比較例15[めっき2層]
 実施例10において試験片に被膜を形成する わりに、試験片に電気めっきにより下地と て銅めっき(めっき厚:5μm)処理を施し、さら  2 層目に銀めっき(めっき厚:20μm)処理を施 し、リング状試験片および角棒状試験片を得 た。得られたリング状試験片および角棒状試 験片を実施例10と同様に評価した。結果を表6 に併記する。

比較例16[めっき単層]
 実施例10において試験片に被膜を形成する わりに、電気めっきにより銅めっき(めっき : 25 μm )を施し、リング状試験片および角 棒状試験片を得た。得られたリング状試験片 および角棒状試験片を実施例10と同様に評価 た。結果を表6に併記する。

比較例17~比較例22[樹脂単層]
 ポリアミドイミド樹脂ワニス(溶剤:NMP)の固 分に対し各種充填材を表6に記載の割合でボ ールミルで十分に均一分散するまで混合して 、混合液を摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm  ×内径 20 mm ×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )、 ョットブラストにより表面粗さRa 0.7 μm : 3の17〕の外径面にスプレー法にてコーティ グした。また、潤滑油浸漬試験用としてSPCC 角棒( 3 mm×3 mm×20 mm )の表面にディッピン 法によりコーティングした。コーティング  100 ℃で 1 時間、さらに 150℃で 1 時間 乾燥し、250℃で 1 時間焼成した。スプレー 数を調整し、被膜厚みが 20~30μm になるよ にした。
 なお、フラーレンを配合したコーティング は、トルエンとNMPとの混合溶剤(混合重量比 率 50:50 )にフラーレンを 5 重量%濃度で溶 させた濃縮液をあらかじめ用意し、これを リアミドイミド樹脂ワニスに所定濃度とな よう添加し調製した。
 上記処理によりリング状試験片および角棒 試験片を得た。得られたリング状試験片お び角棒状試験片を実施例10と同様に評価し 。結果を表6に併記する。

 表6に示す結果から明らかなように、従来か ら使用されている金属めっきである比較例15 よび比較例16は潤滑油浸漬試験において潤 油に溶出する。特に、比較例16は銅めっきの 溶出が多い結果となった。充填材で強化した 層を含まない樹脂被膜を形成した比較例17お び比較例19~比較例21は潤滑油への溶出もな 摩擦係数も小さいが、摩擦試験中に剥離を じた。逆に充填材で強化した層のみの樹脂 膜を形成した比較例18(フラーレンのみ)は摩 試験中の剥離はないものの、樹脂単体(比較 例17)に比べ摩擦係数が増加し、比較例22(SiCの み)は相手材への攻撃性が強く、相手材の摩 が大きかった。比較例23は 1 層目にMoS 2  を添加した層である剥離が発生し、さらに2 層目はフラーレンを添加した層で形成されて いるため、比較例18と同様に摩擦係数が高い 果となった。

 一方、実施例10~実施例17は、1層目に充填 で補強した層を形成しているため剥離が発 せず、また、潤滑油浸漬試験においても潤 油への溶出は見られなかった。さらに、2層 目により低摩擦係数であり、優れたなじみ性 を有していた。

 転がり軸受の保持器にフラーレンと、二 化モリブデンまたは二硫化タングステンを 合したポリイミド系樹脂被膜を形成するの 、保持器と軌道輪の接触による摩擦が小さ 、摩耗や剥離もないため、焼付きが発生し たく、長寿命、高信頼性が得られる。また 硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する 境下において長期間保持器の潤滑性を維持 ることができる。そのため、過酷な条件下 おいて使用される転がり軸受の保持器に好 に利用できる。