Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
CYLINDER
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/044824
Kind Code:
A1
Abstract:
A cylinder in which friction between the inner wall surface of the cylinder and piston rings occurring when a piston reciprocates is reduced in a region in which the piston rings slide on the inner wall surface. The cylinder, in which the piston slides on the inner wall surface of the cylinder, has depressions in a stroke center region of the inner wall surface. The stroke center region is a region extending from the position of the lower surface of a ring groove for the lowermost piston ring when the piston is at the top dead center to the position of the upper surface of a ring groove for the uppermost piston ring when the piston is at the bottom dead center. When the area of the stroke center region is 100%, the sum of the areas of all the depressions is within the range of 1% to 80%, and of the regions of the inner wall surface of the cylinder, the regions other than the stroke center region have no depression.

Inventors:
URABE MITSURU (JP)
MURATA HIROKAZU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/067951
Publication Date:
April 09, 2009
Filing Date:
October 02, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
NIPPON PISTON RING CO LTD (JP)
URABE MITSURU (JP)
MURATA HIROKAZU (JP)
International Classes:
F02F1/00; F16J10/04
Foreign References:
JPH0325073U1991-03-14
JP2004340330A2004-12-02
JPS6259743U1987-04-14
JP2007002989A2007-01-11
JPS6049243U1985-04-06
Attorney, Agent or Firm:
YAMASHITA, Akihiko et al. (3rd Floor Oak Building Kyobashi, 16-10, Kyobashi 1-chome, Chuou-k, Tokyo 31, JP)
Download PDF:
Claims:
 ピストンが内壁面を摺動するシリンダであって、
 前記シリンダの内壁面のうち、前記ピストンの上死点における最下位のピストンリングのリング溝の下面位置から、前記ピストンの下死点における最上位のピストンリングのリング溝の上面位置までの間の領域である行程中央部領域に複数個の凹部が形成されており、
 前記行程中央部領域の面積を100%としたときの、全凹部の面積の合計が1%~80%の範囲内であり、
 前記シリンダの内壁面の、前記行程中央部領域以外の領域には前記凹部が形成されていないことを特徴とするシリンダ。
 前記シリンダの内側にシリンダライナが固着されており、前記シリンダライナの内壁面に前記複数個の凹部が形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のシリンダ。
 前記行程中央部領域の、シリンダ周方向の全ての断面には、前記複数個の凹部のうちの少なくとも一つの凹部が形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載のシリンダ。
 前記行程中央部領域の、前記凹部が形成されていない個所の十点平均粗さRzが4μm以下であることを特徴とする請求の範囲第1項から第3項のいずれかに記載のシリンダ。
 前記凹部のシリンダ軸方向の平均長さが、用いられるピストンリングのうちの、最上位のピストンリングの前記シリンダ軸方向の長さ以下であることを特徴とする請求の範囲第1項から第4項のいずれかに記載のシリンダ。
 前記凹部のシリンダ径方向の平均長さが2μm~1000μmの範囲内であることを特徴とする請求の範囲第1項から第5項のいずれかに記載のシリンダ。
 前記シリンダが、内燃機関に用いられることを特徴とする請求の範囲第1項から第6項のいずれかに記載のシリンダ。
Description:
シリンダ

 本発明は、ピストンがその内壁面を摺動 るシリンダに関し、特には、ピストンとの 復動摩擦を低減することが可能なシリンダ 関する。

 温暖化をはじめとする環境問題が地球規模 大きくクローズアップされ、大気中のCO 2 削減に向けた内燃機関の燃費改善技術の開発 が大きな課題となっており、その一環として 、エンジン等に用いられる摺動部材の摩擦損 失の低減が求められている。これに鑑み、近 年において、耐摩耗性および耐焼付性に優れ 、かつ、摩擦力の低減効果を最大限に発現す ることが可能な摺動部材の材料・表面処理・ 改質の技術の開発が進められている。

 内燃機関の燃費改善など、シリンダが用 られる装置のエネルギー効率を向上させる めには、摩擦損失の低減が有効である。特 、往復運動を行なうピストンリングと、シ ンダの内壁面との間では、摩擦低減が有効 ある。上記往復動摩擦の低減のためにはシ ンダの内壁面の表面粗さを小さくすること 有効な手段であるとされているが、表面粗 が小さすぎると当該内壁面に保持される潤 油がほとんどなくなるため、耐焼付性が低 するという不具合があった。耐焼付性を向 させるために特許文献1ではシリンダライナ を、その内壁面の表面粗さが、ピストンの上 死点側から下死点側に向って粗くなるように 形成している。しかしながら、特許文献1に いては下死点付近および行程中央部におけ 上記表面粗さが大きいため、往復動摩擦が 大してしまうという不都合がある。

 また、特許文献2ではシリンダライナの内壁 面にくぼみを形成することにより、ピストン リングと、シリンダライナとの往復動摩擦を 低減する技術が開示されている。特許文献2 おいては、摺動速度の違いによってシリン ライナをシリンダの軸方向に複数の領域に 割し、領域ごとにくぼみの形状を異なるも とすることにより、往復動摩擦の低減効果 高めている。しかしながら特許文献2におい は、摺動面の少なくとも摺動部材が折り返 摺動端近傍部分に、円形状のくぼみが多数 成されている。ピストンが上死点、下死点 達した際には摺動速度が遅くなるため、上 摺動端近傍部分にくぼみが形成されている 合は油膜が薄くなり、金属接触を起こしや くなって摩擦が大きくなるという不具合が る。

特開平8-200145号公報

特開2007-46660号公報

 本発明は上記問題点に鑑みてなされたも であり、ピストンリングが摺動する領域に いて、ピストンリングと、シリンダの内壁 との往復動摩擦を低減することができるシ ンダを提供することを主目的とするもので る。

 上記目的を達成するために、本発明は、 ストンが内壁面を摺動するシリンダであっ 、上記シリンダの内壁面のうち、上記ピス ンの上死点における最下位のピストンリン のリング溝の下面位置から、上記ピストン 下死点における最上位のピストンリングの ング溝の上面位置までの間の領域である行 中央部領域に複数個の凹部が形成されてお 、上記行程中央部領域の面積を100%としたと きの、全凹部の面積の合計が1%~80%の範囲内で あり、上記シリンダの内壁面の、上記行程中 央部領域以外の領域には上記凹部が形成され ていないことを特徴とするシリンダを提供す る。

 本発明においては、シリンダの内壁面の 面加工をシリンダ軸方向の位置によって異 るものとしているため、ピストンリングが 動する領域において、ピストンリングと、 リンダの内壁面との往復動摩擦を低減する とができる。また、上記行程中央部領域に ける上記凹部の形成面積率を上記範囲内に ることにより、接触面積が小さくなり、潤 油のせん断抵抗に起因する摩擦力を小さく 持することができる。

 本発明においては、上記シリンダの内側 シリンダライナが固着されており、上記シ ンダライナの内壁面に上記複数個の凹部が 成されているものであってもよい。本発明 、上記シリンダの内側に固着されたシリン ライナの内壁面に上述したような凹部が形 されており、そのようなシリンダライナの 壁面と、ピストンとが摺動する場合でも、 リンダライナが形成されておらず、シリン の内壁面に凹部が形成されている場合と同 の効果を得ることができるからである。

 上記発明においては、上記行程中央部領 の、シリンダ周方向の全ての断面には、上 複数個の凹部のうちの少なくとも一つの凹 が形成されていることが好ましい。このよ に、複数の凹部を、シリンダ軸方向に重な ように形成することにより、接触面積を効 的、かつ、平均的に低減することが可能と るからである。

 また、上記発明においては、上記行程中 部領域の、上記凹部が形成されていない個 の十点平均粗さRzが4μm以下であることが好 しい。これにより、上記凹部を形成した場 でも、往復動摩擦を低減することができる らである。なお、上記十点平均粗さRzとは JIS B0601-1994にて規定されているものである

 上記発明においては、上記凹部のシリン 軸方向の平均長さが、用いられるピストン ングのうちの、最上位のピストンリングの 記シリンダ軸方向の長さ以下であることが ましい。これにより、シリンダ内の気密性 高く維持することができるからである。

 上記発明においては、上記凹部のシリン 径方向の平均長さが2μm~1000μmの範囲内であ ことが好ましい。これにより、往復動摩擦 おける潤滑油のせん断抵抗の影響を効率的 低減することができるからである。

 上記発明においては、上記シリンダが、 燃機関に用いられるものであってもよい。 燃機関にはシリンダが多用されており、エ ルギー効率の向上が特に求められる分野で るため、本発明のシリンダを用いることに り、高い効果を得ることができるからであ 。

 本発明のシリンダは、ピストンリングが 動する領域において、ピストンリングと、 リンダの内壁面との往復動摩擦を低減する とができ、上記シリンダが用いられる装置 エネルギー効率を向上させることが可能で るといった効果を奏する。

本発明のシリンダの内側に固着される リンダライナ内壁面の凹部の形成位置の一 を示す説明図である。 本発明のシリンダにおける、行程中央 領域の範囲の一例を示す説明図である。 本発明のシリンダに形成される凹部の 状の例を示す概略展開図である。 本発明のシリンダにおける、凹部の配 の一例を示す概略展開面図である。 本発明のシリンダに形成される凹部の 法位置を説明する概略展開図および概略断 図である。 本発明のシリンダにおける、凹部の配 の他の例を示す概略展開図である。 本発明のシリンダにおける、面積率を 明する概略断面図および概略展開図である 本発明の実施例で用いられたシリンダ イナの寸法を示す概略断面図である。 本発明の実施例において、凹部の形成 用いられたマスキングシートを示す概略平 図である。 本発明の実施例において、凹部の形成 時の状態を示す概略断面図である。 本発明の実施例において、往復動摩擦 を測定するために用いられた装置の構成を示 す概略断面図である。 本発明の実施例における測定結果を示 すグラフである。 本発明の実施例における測定結果を示 すグラフである。 本発明の実施例における測定結果を示 すグラフである。 本発明の実施例における測定結果を示 すグラフである。

符号の説明

 1 … シリンダライナ
 2 … 内壁面
 3 … 凹部
 4 … 行程中央部領域

 本発明のシリンダは、ピストンが内壁面 摺動するシリンダであって、上記シリンダ 内壁面のうち、上記ピストンの上死点にお る最下位のピストンリングのリング溝の下 位置から、上記ピストンの下死点における 上位のピストンリングのリング溝の上面位 までの間の領域である行程中央部領域に複 個の凹部が形成されており、上記行程中央 領域の面積を100%としたときの、全凹部の面 積の合計が1%~80%の範囲内であり、上記シリン ダの内壁面の、上記行程中央部領域以外の領 域には上記凹部が形成されていないことを特 徴とするものである。

 本発明のシリンダは、上述したような凹 が形成されているものであれば特に限定さ るものではない。本発明のシリンダは、上 凹部が形成されている、内壁面の形状によ てピストンとの往復動摩擦を低減する効果 奏するものであるため、ピストンと組み合 て用いられ、当該ピストンがシリンダの内 面上を摺動するものであれば、シリンダの 途、種類、材質等にかかわらず同様の効果 得ることができる。そのため、本発明のシ ンダは、自動車や飛行機のエンジンなどの 燃機関、スターリングエンジンなどの外燃 関に加え、圧縮機などの、熱機関以外のシ ンダとしても用いることができる。

 また、シリンダには、内側にシリンダライ が固着されており、上記シリンダライナの 壁面上をピストンが摺動するもの(以下、シ リンダライナタイプとする場合がある。)と 上記シリンダライナは固着されておらず、 ストンがシリンダの内壁面上を直に摺動す もの(以下、ライナレスタイプとする場合が る。)とがあるが、本発明はこのようなシリ ンダライナの有無にかかわらず、適用するこ とができる。
 以下、このような本発明の各態様(シリンダ ライナタイプおよびライナレスタイプ)につ て、それぞれ説明する。

 A.第一態様(シリンダライナタイプ)
 本発明の第一態様のシリンダは、シリンダ 内側にシリンダライナが固着されており、 記シリンダライナの内壁面に上記複数の凹 が形成されているものである。本態様にお ては、シリンダの内壁面と、シリンダライ の外壁面とが固着されており、ピストンは 記シリンダライナの内壁面上を摺動するも であるため、上記シリンダライナの外壁面 固着されているシリンダの内壁面には、上 凹部は設けられなくともよく、その代わり 、実際にシリンダが摺動する面である、上 シリンダライナの内壁面に上記凹部が形成 れる。

 以下、本態様のシリンダについて、図を いて説明する。図1は、本態様のシリンダの 内側に固着されるシリンダライナにおける、 シリンダライナ内壁面の凹部の形成位置の一 例を示す説明図である。図1に例示するよう 本態様におけるシリンダライナ1の内壁面2に は、複数個の凹部3が形成されている。上記 部3は、シリンダライナ1の内壁面2のうち、 程中央部領域4のみに形成されており、上記 程中央部領域4以外の領域には凹部3は形成 れていない。上記行程中央部領域4は、ピス ンの上死点における最下位のピストンリン のリング溝の下面位置から、上記ピストン 下死点における最上位のピストンリングの ング溝の上面位置までの間の領域である。

 図2は、本態様のシリンダの内側に固着さ れるシリンダライナにおける、上記行程中央 部領域4の範囲の一例を示す概略断面図であ 。図2は、ピストンが往復動する際の、上死 停止位置におけるピストン21aと、下死点停 位置におけるピストン21bとを同一の断面図 示すものである。上記行程中央部領域4は、 シリンダライナ1の内壁面2のうち、上死点停 位置におけるピストン21aの最下位のピスト リング22のリング溝23の下面24位置から、下 点停止位置21bにおける最上位のピストンリ グ25のリング溝26の上面27位置までの間の領 である。図2は、3本のピストンリング(第1圧 力リング、第2圧力リング、オイルコントロ ルリング)が用いられる構成のピストンを示 ており、最下位のピストンリング22はオイ コントロールリングであり、最上位のピス ンリング25は第1圧力リングである。

 シリンダが用いられる装置のエネルギー 率を向上させる、例えば、エンジンの燃費 向上させるためには、ピストンリングと、 リンダの内壁面(本態様においてはシリンダ ライナの内壁面)との摩擦損失低減が有効で る。摩擦損失の低減方法は摺動条件によっ 異なるが、特にピストンは上下死点で速度 0になる等の特徴を持つため、摺動する位置 より異なる。そこで本態様のシリンダの内 に固着されるシリンダライナにおいては、 リンダライナの内壁面の行程中央部領域の に凹部を形成することにより、摺動行程の ての領域において摩擦力を低減することを 能とした。

 すなわち、ピストンの移動速度が比較的 さい上死点付近および下死点付近では、シ ンダライナの内壁面の表面粗さを小さくす ことにより、往復動摩擦の低減を図ること できる。しかしながら、シリンダライナの 壁面と、ピストンリングとの摺動速度が大 い領域である行程中央部領域では、潤滑油 せん断抵抗の影響が大きくなる。そのため 態様においては、シリンダの内側に固着さ るシリンダライナの内壁面のうち、上記行 中央部領域に凹部を形成することで、ピス ンリングと、シリンダライナの内壁面との 触面積を小さくすることにより、潤滑油の ん断抵抗の影響を低減することを可能とし 。

 ピストンリングが摺動する領域全てに凹部 形成(行程中央部領域以外の領域にも凹部を 形成)した場合、上記接触面積が小さくなる とにより接触面圧が増加し、上死点、下死 近傍では境界潤滑となるため、摩擦力が増 する。
 以下、このような本態様のシリンダについ 、項目に分けて詳細に説明する。

 1.行程中央部領域
 まず、本態様において、上記凹部が形成さ る領域である行程中央部領域について説明 る。
 本態様において「行程中央部領域」とは、 述したように、ピストンの上死点における 下位のピストンリングのリング溝の下面位 から、上記ピストンの下死点における最上 のピストンリングのリング溝の上面位置ま の間の領域である。例えば、図2に例示する ように、ピストンの上方から第1圧力リング 第2圧力リング、オイルコントロールリング 順番で3つのピストンリングが配置されてい る場合、上記行程中央部領域の上端はオイル コントロールリングのリング溝の下面位置で あり、下端は第1圧力リングのリング溝の上 位置である。本態様において上記凹部は、 記行程中央部領域のみに形成され、上記行 中央部領域以外の領域には凹部は形成され い。なお、本態様は、上述したような3本の ストンリングが用いられる構成に限定され ものではなく、ピストンリングが2本の構成 (圧力リング、オイルコントロールリングが1 ずつ)や、ピストンリングが1本の構成(ガス ールと、オイルコントロールとを兼ね備え ピストンリング)においても同様に適用する ことができる。

 2.凹部
 次に、本態様のシリンダの内側に固着され シリンダライナの内壁面の上記行程中央部 域に形成される凹部について説明する。
 本態様において、上記行程中央部領域に形 される凹部の形状は特に限定されるもので なく、当該凹部の配置等に応じて適宜調整 ることができる。例えば、図3(a)~(j)に例示 るように、直線および/または曲線から構成 れる形状の凹部を形成することができる。 部は、図3(a)~(c)のような横長の形状でも、 3(d)~(g)のような縦長の形状でも、図3(h)~(j)の うな縦対横の比率がほぼ等しい形状でもよ 。

 また、本態様においては、接触面積を効 的、かつ、平均的に低減するために、上記 程中央部領域の、シリンダ周方向の全ての 面には、上記複数個の凹部のうちの少なく も一つの凹部が形成されていることが好ま い。周方向の断面を考えた場合、ある断面 凹部が形成されていないと、当該断面をピ トンリングが通過する際は、凹部が複数個 成されている断面を通過する際と比べ、ピ トンリングと、シリンダライナの内壁面と 接触面積が大きくなる。そのため、凹部が 成されていない断面を通過する際は、潤滑 のせん断抵抗の影響が大きくなり、結果と て往復動摩擦も大きくなる。

 これに対し、上述したように行程中央部 域において、シリンダ周方向の全ての断面 おいて上記複数個の凹部のうちの少なくと 一つの凹部が形成されている場合は、行程 央部領域内のどの周方向断面をピストンリ グが通過する際も、接触面積を確実、かつ 平均的に低減することができるため、往復 摩擦も確実に低減することができ、高い往 動摩擦力低減効果を得ることができる。

 本態様において「シリンダ周方向の全て 断面において上記複数個の凹部のうちの少 くとも一つの凹部が形成されている」状態 例としては、図4(a)や(b)のような場合を挙げ ることができる。図4(a)および(b)は、上述し 図1の行程中央部領域4における、凹部3の配 の一例を示す概略展開図である。図4(a)およ (b)においては、図面の上下方向がシリンダ 軸方向であり、図面の左右方向がシリンダ 周方向である。図4(a)に例示するように、シ リンダ周方向にひいた線Xは、凹部3aの最下点 5aが、その下方に最も近接する凹部3bの最上 6bよりも下側に位置する。また、シリンダ周 方向にひいた線Yは、凹部3bの最下点5bが、そ 下方に最も近接する凹部3cの最上点6cよりも 下側に位置する。このように、上下に近接す る凹部同士を、シリンダ軸方向に重なるよう に配置することにより、シリンダ周方向の全 ての断面において上記複数個の凹部のうちの 少なくとも一つの凹部を形成することができ る。以上より、ピストンが往復動した際に、 行程中央部領域において、摺動するピストン リングが、シリンダ軸方向のどの位置におい てもシリンダ内壁面との接触面積を小さくす ることができ、往復動摩擦の低減に効果を奏 する。

 ここで、図4(b)も図4(a)と同様、上述した 1の行程中央部領域4における凹部3の配置の 例を示す概略展開図である。図4(b)において 図面の上下方向がシリンダの軸方向であり 図面の左右方向がシリンダの周方向である 図4(a)にあっては、凹部3がシリンダ軸方向 わたって均一の面積率(行程中央部領域の面 を100%としたときの、全凹部の面積の合計の 割合)で形成されているが、この態様に限定 れることはなく、図4(b)に例示するようにシ ンダ軸方向の行程中央部領域4の端部近傍に おいては、凹部3の面積率を小さくし、行程 央部領域4の中央部近傍においては凹部の面 率を大きくしてもよい。

 本態様において上記凹部の寸法は特に限 されるものではなく、シリンダや共に用い れるピストンリングの寸法等に応じて適宜 整することができる。上記凹部は、上記行 中央部領域をシリンダ軸方向に貫くように 成されていてもよいが、シリンダの気密性 持の観点から、上記凹部のシリンダ軸方向 平均長さが、用いられるピストンリングの ちの、最上位のピストンリングの上記シリ ダ軸方向の長さ以下であることが好ましい また、上記凹部のシリンダ軸方向平均長さ 、上記凹部を形成した効果が十分に得られ ように、0.2mm以上、中でも0.5mm以上であるこ とが好ましい。

 上記凹部のシリンダ周方向平均長さは、0 .1mm~15mmの範囲内、中でも0.3mm~5mmの範囲内であ ることが好ましい。上記凹部のシリンダ周方 向平均長さが上記範囲に満たない場合は、凹 部を形成した効果が十分に得られない場合が ある。逆に、周方向平均長さが上記範囲を超 える場合は、ピストンリングの一部が上記凹 部内へ入り込み、ピストンリングが変形する 等の不具合が発生する場合がある。

 上記凹部のシリンダ径方向平均長さは、2 μm~1000μmの範囲内、中でも2μm~500μmの範囲内 特には2μm~50μmの範囲内であることが好まし 。上記凹部のシリンダ径方向平均長さが上 範囲に満たない場合は、凹部を形成した効 が十分に得られない場合がある。逆に、径 向平均長さが上記範囲を超える場合は、加 が困難であり、また、シリンダライナの径 向長さを長くする(肉厚を厚くする)必要が る等の不具合が生じる場合がある。

 本態様において、上記凹部間のシリンダ 方向平均長さは、0.1mm~15mmの範囲内、中でも 0.3mm~5mmの範囲内であることが好ましい。上記 凹部間のシリンダ周方向平均長さが上記範囲 に満たない場合には、ピストンリングが摺動 するシリンダライナの内壁面の幅が小さすぎ て、ピストンリングと、シリンダライナの内 壁面とが安定して摺動できない可能性がある 。逆に、上記凹部間のシリンダ周方向平均長 さが上記範囲を超える場合には、凹部を形成 した効果が十分に得られない可能性がある。

 なお、本態様において上述した凹部の各 均長さとは、図5に例示する各個所の平均長 さを意味するものとする。図5(a)は、シリン ライナの内壁面の、シリンダ軸方向を図面 上下方向に示した概略展開図である。また 図5(b)は、シリンダライナの、周方向におけ 概略断面図である。上記凹部の軸方向平均 さとは、図5(a)に例示するように、シリンダ 軸方向における、凹部3の長さの平均である

 上記凹部3の周方向平均長さとは、図5(a) 例示するように、シリンダ周方向における 凹部3の長さの平均である。図5(b)に例示する ように、上記凹部3の周方向平均長さとは、 壁面2を含む面における長さの平均を意味す ものとし、上記凹部の面積についても同様 する。

 上記凹部3の径方向長さとは、図5(b)に例 するように、凹部3の底面からシリンダライ 1の内壁面2までの長さの平均である。また 上記凹部間のシリンダ周方向平均長さとは 図5(a)および図5(b)に例示するように、隣り合 う凹部3の間の長さの平均である。

 本態様において上記凹部の配置は特に限 されるものではない。例えば図6はシリンダ ライナの内周を周方向に開いた展開図を示す が、図6(a)に例示するように、凹部が上記行 中央部領域をシリンダ軸方向に貫くように 成されていてもよいし、図6(b)に例示するよ に、シリンダライナの内壁面上にらせん状 形成されていてもよい。また、図6(c)および (d)に例示するように、シリンダ軸方向に特定 の長さを有する形状の凹部が一定の間隔をお いて配置されていてもよい。さらに、凹部は 不規則(ランダム)に配置されていても、図6に 例示されているように規則的に配置されてい てもよい。加えて、1つのシリンダライナの 壁面上に形成される複数個の凹部の形状や 法は、互いに異なっていても、同一でもよ 。

 本態様においては、上記行程中央部領域 みに複数の凹部が形成されており、行程中 部領域の面積を100%としたときの、全凹部の 面積の合計が1%~80%の範囲内であればよく、シ リンダ周方向の断面当たりに形成される凹部 の個数等は特に限定されるものではない。し かしながら、一つのシリンダ周方向の断面に 形成される凹部の個数が少なすぎる場合など は、上記凹部を形成し、接触面積を低減する ことによって得られる往復動摩擦力低減効果 が十分に得られない可能性がある。そのため 、上記行程中央部領域においては、シリンダ 周方向の全ての断面に、往復動摩擦力低減効 果が得られる程度の凹部が形成されているこ とが好ましい。

 上記往復動摩擦力低減効果が得られる程 の凹部とは、共に用いられるピストンの往 動の速度等によって異なるものではあるが 本態様においては、行程中央部領域の面積 100%としたときの、全凹部の面積の合計が1%~ 80%の範囲内であり、好ましくは10%~60%の範囲 、中でも20%~50%の範囲内である。上記面積率 上記範囲に満たないと、凹部を形成した効 が十分に得られない場合があり、上記面積 が上記範囲を超えると、接触面積が小さす 、ピストンリングがシリンダライナの内壁 を安定して摺動できなくなる等の不具合が じる可能性があるからである。上記往復動 擦力低減効果の観点から、凹部の寸法には 述したような好ましい範囲がある。そのた 、このような凹部の寸法の好ましい範囲を 慮し、上記面積率が上記範囲内となるよう 、シリンダ周方向の断面当たりに形成する 部の個数を調整することが好ましい。

 本態様において「行程中央部領域の面積を1 00%としたときの、全凹部の面積の合計」とは 、図7(a)および(b)に例示するように、凹部3の 積をA 1 、A 2 、A 3 ・・・A n としたときの、上記行程中央部領域の面積に 対する、A 1 、A 2 、A 3 ・・・A n の合計の比率を意味するものである。上記面 積率は、上記行程中央部領域における凹部3 面積A 1 、A 2 、A 3 ・・・A n の合計A total と、行程中央部領域における凹部3以外の内 面2の面積Bの合計B total とを用い、下記式で表される。なお、図7(a) 例示するように、ここで上記凹部3の面積と 、上記凹部3の底部の面積ではなく、内壁面 2を含む断面における面積を意味する。

 本態様においては、上述した凹部の形状 寸法、配置、面積率等は、行程中央部領域 全ての領域において同じでも良いし、領域 よって異なっていてもよい。例えば、行程 央部領域において、シリンダ軸方向の各領 で上記面積率が異なっていてもよく、図4(b) に例示するように行程中央部領域の上方部分 および下方部分(端部近傍)においては凹部面 率が小さく、行程中央部領域の中央部分に いては凹部面積率が大きくなっていてもよ 。また、上記面積率等は段階的に変化して 、連続的に変化してもよい。

 3.シリンダライナ
 本態様におけるシリンダライナは、ピスト と組み合せて用いられるシリンダの内壁に 着して用いられるものであり、ピストンに 着されたピストンリングが、その内壁面上 摺動するものである。本態様のシリンダの 側に固着されるシリンダライナは、上記行 中央部領域のみに複数の凹部が形成されて り、行程中央部領域の面積を100%としたとき の、全凹部の面積の合計が1%~80%の範囲内であ ればよく、その寸法や材質等は、共に用いら れるシリンダの寸法や運転温度等に応じて適 宜調整することができる。

 本態様においては、ピストンリングと、 リンダライナの内壁面との往復動摩擦低減 観点から、上記行程中央部領域の、上凹部 形成されていない個所の十点平均粗さRzが4 m以下、中でも2μm以下、特に1μm以下である とが好ましい。本態様においては、シリン ライナの内壁面における、上死点付近の領 、下死点付近の領域、および上述した行程 央部領域等、ピストンリングが摺動する全 の領域が上記表面粗さを有することが好ま い。なお、上記十点平均粗さRzとは、JIS B060 1-1994にて規定されているものである。

 4.シリンダ
 本態様において用いられるシリンダは、上 したような凹部が形成されたシリンダライ を、その内部に固着できるものであればよ 、その寸法や材質等は、当該シリンダが用 られるエンジンや圧縮機等の寸法や運転温 等に応じて適宜調整することができる。

 B.第二態様(ライナレスタイプ)
 本発明の第二態様のシリンダは、上記「第 態様」のようなシリンダライナは固着され おらず、シリンダの内壁面に直に上記凹部 形成されており、ピストンが当該シリンダ 内壁面上を直に摺動するものである。

 本態様において用いられるシリンダは、 の内壁面に上述したような凹部が形成され ものであればよく、その寸法や材質等は、 該シリンダが用いられるエンジンや圧縮機 の寸法や運転温度等に応じて適宜調整する とができる。また、シリンダの内壁に表面 理が施される場合があるが、本態様はこの うな表面処理の有無や、シリンダ母材の材 等にかかわらず適用することができる。

 本態様においては、ピストンリングと、 リンダの内壁面との往復動摩擦低減の観点 ら、上記行程中央部領域の、上凹部が形成 れていない個所の十点平均粗さRzが4μm以下 中でも2μm以下、特に1μm以下であることが ましい。本態様においては、シリンダの内 面における、上死点付近の領域、下死点付 の領域、および上述した行程中央部領域等 ピストンリングが摺動する全ての領域が上 表面粗さを有することが好ましい。なお、 記十点平均粗さRzとは、JIS B0601-1994にて規定 されているものである。

 本態様のシリンダは、シリンダライナが いられず、シリンダの内壁面上に上記凹部 形成されること以外については、上記「A. 一態様」のシリンダライナタイプのシリン と同様であるため、ここでの説明は省略す 。すなわち、「A.第一態様」の「1.行程中央 領域」および「2.凹部」については、本態 のライナレスタイプにもそのまま適用する とができ、本態様のシリンダは、その内壁 の行程中央部領域に上述したような凹部を けることにより、「A.第一態様」の場合と同 様な効果を奏するものである。

 なお、本発明は、上記実施形態に限定さ るものではない。上記実施形態は、例示で り、本発明の特許請求の範囲に記載された 術的思想と実質的に同一な構成を有し、同 な作用効果を奏するものは、いかなるもの あっても本発明の技術的範囲に包含される 例えば、本発明のシリンダ内壁面の材質は アルミ、アルミ系合金、鋳鉄、鋳鋼、鋼等 従来より使用されている材質を用いること できる。

 以下に実施例および比較例を示して本発明 さらに具体的に説明する。
 [実施例1]
 以下の方法によりシリンダライナを加工し 当該シリンダライナの往復動摩擦力を測定 た。

 (シリンダライナの加工)
 図8に示す寸法(mm)を有するシリンダライナ( 質:FC250)の行程中央部領域に、図9に示すマ キングシートを用い、以下の手順で凹部を 成した。凹部は、図5(a)に示す形状および配 で形成した。
(1)シリンダライナの内壁面に上記マスキング シートを貼る。
(2)図10に示すように、銅板製円筒91(板厚:0.5mm 円筒外径:74mm)をシリンダライナ92に挿入し 銅板製円筒91とシリンダライナ92との隙間が 一となるように固定する。
(3)上記(2)のシリンダライナ92を容器93に入れ 。
(4)上記容器93に腐食溶液94を注ぐ。
(5)上記シリンダライナ92を陽極、上記銅板製 筒91を陰極として1.5Vの電圧を印加し、電解 食を行なう。
(6)5分間腐食した後、上記容器93からシリンダ ライナ92を取り出す。この際の凹部の寸法は シリンダ周方向長さを0.8mm、シリンダ軸方 長さを0.8mm、シリンダ径方向平均長さを20μm した。凹部の形状(寸法)は、シリンダ周方 長さ及びシリンダ軸方向長さについては、 脂を使用してシリンダ内壁面の形状を転写 て測定した。また、シリンダ径方向平均長 は、表面粗さ・輪郭形状測定機を用い、上 測定機のプローブをシリンダ軸方向へ移動 せて測定したときの平均値である。

 (往復動摩擦力の測定)
 上記手順で加工したシリンダライナの往復 摩擦力(N)を図11に示す装置を用いて測定し 。この際に用いた試験片ピストンリングの 方向長さh1は1.2mm、径方向長さa1は3.2mm、ピス トンリングの接線方向張力Ftは9.8Nであった。 また、往復動摩擦力の測定時の回転数は50~750 rpm、ピストンリング周辺温度は80℃であり、 試油はSAE粘度10W-30のものを用いた。

 (評価)
 シリンダライナの内壁面の凹部が形成され いない個所の十点平均粗さRzが2μm、凹部の リンダ径方向平均長さが10μm、回転数が750rp mの際に、上述した面積率が0%、1%、10%、30%、5 0%、60%、80%、90%の場合の測定結果を図12に示 。図12においては、上記凹部が形成されてい ない、上記面積率が0%の従来品の摩擦力を1.00 としたときの摩擦力比を示す。図12から、上 面積率が1%~80%の範囲においては、効果的に 擦力が低減されており、摩擦力は上記面積 が50%の時に最小となることが分かる。これ 、上記面積率を増加させていくと、50%まで 接触面積の減少効果により摩擦力が減少し 上記面積率が50%を超えると接触面積が小さ なることによって摺動部の面圧が過剰に高 なり、摩擦力が増加することに起因するも と考えられる。

 シリンダライナの内壁面の凹部が形成さ ていない個所の十点平均粗さRzが2μm、上記 積率が50%、回転数が750rpmの際に、凹部のシ ンダ径方向平均長さが0μm、2μm、5μm、10μm 50μm、100μm、500μmの場合の測定結果を図13に す。図13においては、上記凹部が形成され いない、凹部のシリンダ径方向平均長さが0 mの従来品の摩擦力を1.00としたときの摩擦力 比を示す。図13から、凹部のシリンダ径方向 均長さが5μm以上の場合に効果的に摩擦力が 低減されていることが分かる。これは、通常 の油膜厚さが5μm程度であると考えられるた 、凹部のシリンダ径方向平均長さを5μm以上 することでピストンリングが通過する際に 滑油が凹部内に一時的に退避することが可 となり、潤滑油のせん断抵抗の影響を受け くくなることに起因するものと考えられる

 上記面積率が50%、凹部のシリンダ径方向 均長さが10μm、回転数が750rpmの際に、シリ ダライナの内壁面の十点平均粗さRzが0.5μm、 2μm、4μm、5μmの場合の、測定結果を図14に示 。図14においては、上記凹部が形成されて ない、シリンダライナの内壁面の十点平均 さRzが2μmの従来品の摩擦力を1.00としたとき 摩擦力比を示す。図14から、十点平均粗さRz が同じ場合でも、凹部が形成されているもの は、凹部が形成されていないものに比べて摩 擦力が大幅に低減されていることが分かる。 また、凹部が形成されているものの場合、十 点平均粗さRzが2μmを超えると摩擦力が急激に 大きくなっていることが分かる。これは、凹 部を形成することにより接触面積が小さくな り、凹部が形成されていない場合と比べて摺 動部分の面圧が高くなるため、摺動面の表面 粗さの影響を受けやすくなることに起因する ものと考えられる。

 [実施例2]
 図11に示す装置を用いて、摩擦力による機 的損失(FMEP)を求めた。その際の試験方法は ピストンに試験片ピストンリングをセット 、馴染み運転をした後、オイル温度80℃にて エンジンスピードに相当する回転数を変化さ せて、摩擦力を測定した。本実施例において は、行程中央部領域のみに凹部が形成された シリンダライナ(実施例2)、凹部が形成されて いないシリンダライナ(比較例2-1)、摺動端の に凹部が形成されたシリンダライナ(比較例 2-2)、摺動端および行程中央部領域に凹部が 成されたシリンダライナ(比較例2-3)について 、摩擦力を測定した。なお、上記行程中央部 領域に凹部を形成する場合は、上記行程中央 部領域の面積を100%としたときに、全凹部の 積の合計が50%となるように形成した。また 上記摺動端とは、図11に例示する装置のシリ ンダライナの、上記シリンダライナの上端か らピストンの上死点における試験片ピストン リングのリング溝の下面位置までの領域(上 摺動端)、およびピストンの下死点における 験片ピストンリングのリング溝の上面位置 ら上記シリンダライナの下端までの領域(下 側摺動端)を意味するものとする。

 測定結果を図15に示す。図15においては、 凹部が形成されていない、比較例2-1のシリン ダライナの機械的損失を1としたときの、そ 他のシリンダライナの機械的損失比を示す 図15から、行程中央部領域のみに凹部が形成 された実施例2のシリンダライナは、凹部が 成されていない比較例2-1や、摺動端に凹部 形成されている比較例2-2および2-3よりも機 的な損失が少ないことが分かる。